お出かけ苦手勢の酷暑東京旅行記②:新作歌舞伎刀剣乱舞と東京のはなし

①ではしぶしぶお出かけした様子と真夏の着物装備について書いたので、②ではお出かけの内容と感想をつらつら……というよりはたらたらと書き綴っていきたい。

 

国立新美術館「テート美術館展 光」

ごく正直に言うと
歌舞伎の前に時間があるからどこか出かけようかな→でも着物だしなるべく外歩きたくないな→国立新美術館、駅直結だ!
というだけで行った。

Stardust particle
The British Channel Seen from the Dorsetshire Cliffs

あまり美術に造詣はないので、綺麗だなとふわっと感じる絵が好きだ。そんな調子で展示内容の良し悪しを語るのはおこがましいので、ただ好きな絵が多かった、とだけ言っておこうと思う。空とか海の絵が好きだし、光が差し込む様子も好きだし、透ける感じ、透明感が好きだ。眼福だった。

 

新橋演舞場「新作歌舞伎刀剣乱舞『月刀剣縁桐』」

記憶違いや用語の間違いがあってもご容赦ください。

今回の旅行の目的。

まず歌舞伎座に向かった。銀座といっても思ったほど和装の人は少ないんだなと思っていたが、歌舞伎座付近にくるとさすがに和装が増えてくる。じろじろ見てしまって申し訳ない。

お土産に歌舞伎揚を買ってから新橋演舞場に向かう。歌舞伎座まわりに比べて少し若いお嬢さんが増えてきた。ずらっと長い列ができている。その間を抜けて予約済みだったイヤホンガイドを受け取り(これはとてもスムーズ)、最後尾に並んで開場を待つ。
座席は2階左最後列。壁一枚後ろで、歌舞伎に登場する刀の展示が行われていた。花道は全く見えない。モニターはあったが、始まってみると光で飛んでしまってあまりよく見えないということがわかる。
座席はあまり広くなく、歌舞伎揚を2箱買っていなくてよかったなと思う。左側に4席も空きが並んでいたが、始まってから3席埋まった。

イヤホンガイドを聴きながらだからか、席の問題か、幕が開く前に押彦さん、武彦さんが客席に降りてくださっても残念ながらマイクなしではほぼ聞き取れず。何おっしゃってたんだろうな。

歌舞伎を観るのは初めてで、伝統芸能ということで気後れしていた面はあった。実際に観てみると、江戸のエンターテイメントなんだなと腑に落ちた。現代人には少し言葉が難しくても、ストーリーも演出も、エンタメだった。なんなら、ストーリーはほかの2.5次元よりわかりやすい。
だってこれまでに、刀剣乱舞であんなふうに恋愛を見せてくれたメディアミックスあったか?*1あれは男性役者が女性も演じる歌舞伎ならではだったのではないか。そして同時にあの恋愛要素の使い方は、エンタメのお約束として足した、だった。
それに親子の愛や武士の精神、どれも江戸の庶民のみんな、好きでしょ?という要素。
さらには回転する舞台や階段状の装置の上でのアクロバティックな殺陣。ドキドキ!ワクワク!盛りだくさん!庶民のお楽しみ!!間違いなく、歌舞伎に(勝手に)感じていたハードルは下がった。今後興味のある演目があったらまたチャレンジしてみようかなと思うので、今回の演目でそういう層を一人増やすことに成功している。

座席も、正面や花道が見えないという残念さはあったものの、本当はあまり見えないはずの裏側の様子が見えたり、俯瞰できておもしろかった。あと実は、開演前や幕間にほかの観客のみなさんを見るのも楽しかった。とはいえやっぱりちゃんと見せ場が見たいので、千秋楽配信は買おうかなという気持ち。*2……本当は、配信なんてないだろうから、と現地のチケットを入手したというところはあったのだけど、歌舞伎っていつも配信があるのかしら。

演目中は、小烏丸の妖艶さに目を引かれた。紅梅姫(仕方ないのだけれど後半に出番がなくて寂しい)といい、女形の方の色気よ……。*3
あと松永弾正役の中村梅玉さんの、さすがの貫禄。実は出番はそれほど多くなかったのに、あの存在感の大きさ。

それから、琵琶の奏者が女性の方で、かっこよかったな。ほかの場面の唄でもこの女性の声だからこその雰囲気もあって、これは現代の歌舞伎だからこそなんだろうと思いながら味わった。

今でこそ光の演出があったりワイヤーアクションがあったり、あとはマイクなんかもあるわけだけれど、かつての歌舞伎はどんな感じだったのだろうな。突然花道にせり上がってきた異界の者はどう見えたのだろう。

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刀剣博物館「日本刀 記録の系譜 -記録の歴史と記録されたモノたち- 」

最終日、せっかくなら帰る前にもう一ヶ所行きたいと話したところ、彼(今回同行していない)におすすめされたので。特に審神者ではないのだけれど、過去に2度ほど行ったよ、とのこと。

見事に晴れ渡って、予想最高気温は36℃。電車は隅田川の上を走った。両国国技館前を通り過ぎ、江戸東京博物館も改修が済んだら行きたいなと思いながら旧安田庭園へ。横綱1丁目かと思ったら横網1丁目だった。

池の向こうにスカイツリーが見えた。押上のあたり、ほぼ海抜0mだそうで、普段はあのてっぺんかその上で暮らしているんだなと眺めた。

skytree

刀剣博物館は海外からのお客さんが多くて驚いた。みんなじっくりとケースの中を覗き込んでいる。

Sukehiro

展示は刀剣の記録についてで、押形をあんなにたくさん、じっくり見たのは初めてだった。今でも写真より刃文がわかりやすいから押形の技法も使われるのだとか。写真やレーザー等、現代の技術とそれぞれの特徴から使い分けながら、少しでも詳しい記録を残そうという情熱がすごい。

個人的には手描きの刀剣の断面の組織図が興味深かった。

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東京のこと

大学時代は東京に住んでいた。それも新宿区内に。そこであまり良い思い出がないことによるものか、東京がどうにも苦手だ。

東京は自由で、無関心で、ときどき優しく、怖い街だと思っている。

東京の良いところは、少し待てば電車が来て、簡単に美術館にも博物館にも行けて、伝統芸能もすぐ見ることができる、そういう選択肢の多いところ。怖いところのひとつは、動かずにそういうものに出会わずに、ほかの何にも触れずに、すり減っていくのも簡単なところ。

お出かけへの苦手意識が強いので、つい「いかに早く家へ帰れるか」という気分で、無理にでも日帰りしたこともあったけれど、少し滞在時間を延ばしてあちこち行ってみるのはいいなと思った。

とはいえ、やはり東京は住むより遊びに行くところだ。暑いし。田舎に帰って21℃の夜風を浴びて、やっと息ができた気がした。

ginza

*1:全部追えているわけではないので把握していないかもしれない。

*2:下書きしてから公開するまでに購入しました。千秋楽は7月27日です。

*3:小烏丸はもちろん男士だが、河合雪之丞さんが女形を多く演じられている。旧芸名が市川春猿さんと知って、あああの方か!となった。