まあ家から出ないのだ。
お出かけ体力が全くなく、土日の二日間で宿泊しての遠出なんて、翌月曜日が休みでない限りできない。家から離れる距離×時間に比例して疲弊する。さらに同行者がいれば×人数である(変数が多すぎる)。そんな人間が酷暑の東京に二泊三日で出かけ、なおかつ着物を着たときの記録となる。自分用の備忘録の面が強いので人の役には立たないと思いつつ、「それほど着慣れていない人が真夏に着物を着て出かけた事例」を集めたい人はきっといるはずと思って……。
Why
長く刀剣乱舞をプレイしている。この8年間、ログインしなかったのは(ほぼ)海外旅行に行っていた期間だけだ。*1アニメは一応全部見ていて、いわゆる2.5次元(ミュージカルや舞台)は、抵抗はないがあまりしっかりと見たことはない。*2
着物は10年ほど前から、一時は月に一度ほど着ていたが、そもそも上述のとおりお出かけ嫌いのためにさほど着る機会を重ねていない。そして、着てもいつも県内自家用車移動のみで遠出しての自装は経験なし。特にここ数年は時勢のせいであまり着ていなかったが、これからまたたくさん着たいと思っているところ。
着物に興味を持つと自然と伝統芸能も目に入りやすくなる。そこにとうらぶ歌舞伎である。真夏の東京に怯んだものの、とりあえずゲーム先行を申し込んだら当たったので腹を括った。
Who
こんな旅行に誘える友達などいないので一人旅である。どんなに仲が良い友達も恋人も、24時間一緒だと疲れてくるので一人の方が良いというのもある。
When
7月の三連休、金曜日に仕事を早退して東京へ向かい、土曜日に観劇して、日曜日に帰り、月曜日は一日中寝ているという予定を組んだ。開演は16時30分だが、三連休なのもあるので移動時間に余裕を見たいし、着付けも都度忘れるので時間がかかることを思うと当日移動は無理と判断した。
直前まで幾度となく天気予報を確認した。梅雨の最中、雨も怖いが暑さも怖い。もし土砂降りの予報なら着物はさすがにあきらめるのか、もし猛烈に暑くても着物を着るのか。結局、土曜日は曇りで最高気温32℃ほどの予報となったので、予定通りに土曜日は着物と決めた。
なお、私が普段過ごしているのは田舎の山の上である。日中は強い紫外線が降り注ぐが、朝晩は涼しい。三連休直前には最高気温が25℃を下回り、ますます東京の暑さへの恐怖を募らせた。
What
何を持って行ったらよいものか。お出かけ経験値が低いので、あれもこれもと荷物が多くなる。やっぱりいらないのでは、と出発前の車の中で抜いたものもあった。次の機会までにパッキング術を学びたい。
- 着物(一式)、履き物
初日は仕事から直行なのと、着物での長時間移動にはまだ不安があるので和服は中日のみ。となると履き物も持って行く必要があるので荷物はより増える。
もちろん和洋ミックスでパンプスやサンダル、というのも良いのだけれど、私はあまり似合わないし、せっかくの歌舞伎、フル和装でいきたい。
何を着たかは後述。 - バッグ
キャリー+通勤バッグに加え、着物のとき用のかごバッグを。通勤バッグが着物に合うか、着物に合うバッグをその日の通勤バッグにすればよかったのだけれど、ちょっとうまくやれなかったので。こうして荷物が増えるのである。 -
ハウスオブローゼ ミントリープ クール ボディシート
東京の暑さが怖くて……たしかTwitterのフォロワーさんがいいと言っていた気がすると思って用意した。www.hor.jp
東京に着きました
到着は夜だが、昼のように暑いし、昼のように人が歩いている。
宿をとったのが新橋だから、なおさらそう感じたのかもしれない。
着物を着る
翌朝、曇り、予想最高気温32℃の東京。用意したのはこんな感じ。
- 着物
ポリエステルの薄物。リサイクルなので素性はわからないけれど、透け感は少な目でセオαかなと思っている。
よくポリは暑いというけれど、ほかに持っている夏物はみな浴衣で、綿や綿麻に比べて汗を吸い込みにくいことが旅先では良さそうだと思ってこれに。正解だったと思う。 - 麻の名古屋帯
麻の八寸帯、ハリがあって薄くて、これもとても軽い。そして濡れても大丈夫。半幅帯の方が良いかとも考えたが、むしろこの帯が一番涼しかったのでこれにした。これもリサイクルなのだけれど、ちょっと垂れが長めの作り、かつ普段と逆に巻きたい柄をしているので事前に数回練習をしておいた。
座席は最後列だったので多少背中にボリュームが出ても大丈夫そうだったけれど、帯枕のひもを省きたくて銀座結びに。知人に聞いた「背中にタオルを丸めて入れて、座っている間は抜いておき、立ったら戻して形を整える」という技を実践したものの、麻の帯で3時間も座るとさすがにぺちゃんこの形が記憶されてしまって、帰り道はちょっと寂しい形になっていた。 - 草履
菱屋カレンブロッソのカフェ草履。本当はコルクの下駄が軽くて足にもなじんでいるのだけれど、観劇なので草履に。多少の雨にも耐えられる。 - 着物スリップ
高島ちぢみの襟付き着物スリップ。長襦袢と肌襦袢・裾除けを兼ねて着るものを減らす作戦。腰のあたりにタックがあったりとちょっと癖がある形をしていて、私はひもを使うよりコーリンベルトを使った方が着やすい。着物の透け感があまりないからこれ一枚で着られたけれど、もっと透けるようなら難しいかも。 - 下着
フェリシモのフラットブラが着物界隈では和装時に使えると有名(たぶん)なのだけれど、以前売っていたそのブラキャミ版を着た。ブラだともう一枚キャミソールなり肌襦袢なりを着る必要が出るから、ここでもとにかく着るものを減らそうとしている。ただ、キャミソールだとあまり脇の汗はとってくれないので、ブラ+脇まで覆うもの(エアリズムとか)の方がいいという人もいそう。 - 足袋、ひも類
いつもどおりのものを。本当は麻の足袋とか用意しようかと考えたけれど、結局いつものストレッチ足袋で。それほど暑さは感じなかった。 - 帯締め、帯揚げ
シルバーの細い帯締めと、絽の帯揚げ。夏物の帯揚げはこれ一枚しかないのでほかにもほしいな。帯締めは特に夏物ではないけれど、冷たい感じが夏と冬に似合うので。 - 補正
さぼりました。
普段と勝手の違うホテルの部屋での着付けは、ちょっとした不便もありつつも、全身鏡と洗面の鏡が向き合う配置が便利だったりして思ったよりはスムーズに進んだ。とりあえずエアコンをしっかり効かせて、ミントリープのボディシートで全身を拭いてから着付けをしたので、この時点での汗は最小限。ちょっと帯結びが小さくなってしまったり、襟合わせに反省はあったものの想定よりはずっと良くできたと思っている。
このあと一日過ごして宿に帰ったら、着物スリップと下着、スリップに使った伊達締めは汗でぐっしょりだった。一晩干しても湿り気が残っているくらい。ポリの着物はさらさらだったので、浴衣にしなくてよかったと思った。綿だったら着物も汗を吸ってずっしりとしてそうだ。ただ、ポリのふわふわ感で着付けが崩れやすかった面もあったので良し悪しかもしれない。
東京は鏡やガラスが至る所にあって軽い手直しが都度できたので、ちょっと不安な着付けで歩くときには便利だなと思う。まあ疲れ切って宿のエレベーターの鏡を見たらもう、襟なんかぱかぱかでしたけれど。
暑かったかどうかというと、それはもちろん暑かったけれど、たぶん洋服でも同じだったので気分の上がる方を選んで良かったと思っている。とはいえ翌日の、かんかん照り最高気温36℃の日だったらちょっと、着物を着る勇気は出なかったかもしれない……。ほどほどに曇っていて、熱が籠ってはいるけれど上がりきらない気温だったことが功を奏した。
観光に出かけるまででこんなに長くなってしまったので、一旦区切って、行った場所の感想はまた②で。